研究内容 RESEARCH

研究の概要

私たちの研究室では「基礎研究の成果を臨床現場へ」をモットーに、再生・細胞医療等、従来の医療技術では解決できない疾患治療を可能とする研究開発、従来にない効果が期待される創薬技術開発、新規医療機器装置への応用可能な要素技術開発を目指しています。

1.再生・細胞医療に関する研究

2012年山中伸弥先生がノーベル医学生理学賞を受賞したiPS細胞技術によって、動物の体細胞でも初期化が可能で体を構成するあらゆる細胞に分化することができることが示され、臓器再生や細胞治療に新しい道筋ができました。当研究室ではiPS細胞技術をいち早く取り入れ、「欲しい」リンパ球のみをiPS細胞から大量に誘導する技術の開発に世界に先駆けて成功しました。現在では新しいがん免疫細胞療法として治験による安全性および有効性の検証を進めるとともに、より大量かつ安定的に同等な細胞を分化誘導する技術を開発するため、多能性幹細胞の自己複製機構の解明や血球系・免疫系細胞の分化発生機構の解明といった基礎研究の重要課題に取り組んでいます。

2.免疫制御に関する研究

現在、新興・再興感染症やがんが人々の健康を脅かす主な要因として挙げられます。当研究室では免疫を制御することでこれらの脅威を取り除くための研究に取り組んでいます。iNKT細胞は自然免疫系と獲得免疫系の橋渡しをする細胞で、その機能を上手に引き出すことで適切な免疫調節ができるだけでなく、感染症に対する生体防御反応や腫瘍の除去に有用であることが分かっています。iNKT細胞の詳細な機能解析や創薬化学に応用可能な化合物のスクリーニング探索に取り組んでいます。

3.新規医療機器や装置へ応用可能な要素技術開発に関する研究

基礎及び臨床現場では先進的な医療機器や装置によって研究開発や病気の診断が行われています。しかしながら、ビッグデータを容易に扱えるようになり、ナノテクノロジーやイメージング技術などに著しい進展が見られることから、既存技術を上回る機器や装置の開発が期待されます。当研究室ではこれら機器や装置の能力が最大限発揮されるようなツールの創生に取り組んでいます。

iNKT細胞再生がん免疫療法

高い抗腫瘍効果が見込まれるiNKT細胞ですが、ヒト末梢血中T細胞のうち0.01%-0.1%しか存在しないため、体外に取り出し治療に必要な細胞数まで培養・増殖させることが非常に難しいという課題がありました。我々はこの課題を解決する方法として、iPS細胞技術によってiNKT細胞への分化能力を持つ多能性幹細胞を無制限に増殖させた後、iNKT細胞へ再び分化誘導することで、治療に十分なかつ均一な量と質を有するiNKT細胞をタイムリーに供給することを目指す研究を進めてきました。令和元年度中にAMED再生医療実現拠点ネットワークプログラムの支援のもと、理化学研究所・千葉大学と協力して医師主導治験(非臨床試験)を開始する計画です。